家づくりの進め方|中古控除拡充でも新築を選ぶ判断軸

中古のローン控除が拡充される時代に、あえて新築を選ぶという意思決定—令和8年度税制改正を読む

2026年度税制改正で住宅ローン控除は5年延長され、中古住宅の優遇が新築水準へ近づきました。結論から言えば、制度差だけで新築か中古かは決められません。本記事では改正の構図を整理し、注文住宅を「今」選ぶ判断軸と、施主が見直すべきタイムラインを、一次情報をもとに静かに読み解きます。

  • 2026年度税制改正で住宅ローン減税は5年延長され、2026年1月〜2030年12月の入居が対象
  • 省エネ基準適合の中古住宅は控除期間が10年→13年に拡充され、床面積要件も40㎡以上に緩和
  • 新築の省エネ基準適合住宅は借入限度額が2,000万円に減り、2028年入居以降は対象外に
  • 2028年以降は災害レッドゾーンの新築が控除対象外となり、立地確認の重みが増す
  • 新築か中古かは控除額だけでなく、性能・立地・築年数・間取り自由度を含む総額で判断する

2026年(令和8年)1月の入居分から、住宅ローン減税の中身が変わりました。省エネ性能の高い中古住宅は控除期間が13年へ拡充される一方、新築は性能と立地の条件が絞り込まれます。この記事では、これから新築か中古かを決める方に向けて改正の要点を整理し、注文住宅を選ぶ場合の資金計画とスケジュールの考え方をまとめます。控除額や適用可否は入居年・住宅区分・性能区分・世帯属性の組み合わせで変わるため、最終的な判断は一次資料と税理士等への確認を前提としてください。

令和8年度税制改正:住宅ローン減税はどう決まったか

与党の「令和8年度税制改正大綱」は2025年(令和7年)12月19日に決定され、政府の「令和8年度税制改正の大綱」は同年12月26日に閣議決定されました(財務省)。両者は別の文書で、日付も異なります。

その後、大綱に基づく「所得税法等の一部を改正する法律」が成立し、国土交通省も「関連税制法は令和8年3月31日に国会で成立しております」と追記しています。したがって本記事は大綱段階の見通しではなく、成立済みの制度に基づく整理です。住宅ローン減税は適用期限が5年間延長され、令和8年1月1日から令和12年(2030年)12月31日までに入居した場合が対象、控除率は年末残高の0.7%です(国土交通省「住宅ローン減税等の延長・拡充が閣議決定されました!」)。

中古住宅ローン控除の拡充内容—新築との差が縮まる

今回、最も大きく動いたのが既存住宅(中古住宅)の扱いです。国土交通省は令和8年以降に入居する場合の措置として、省エネ性能の高い既存住宅について借入限度額を引き上げ、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置を講じるとともに、控除期間を13年間に拡充するとしています。省エネ基準に適合しない「その他の住宅」は、従来どおり控除期間10年間のままです。

あわせて床面積要件も緩和されました。床面積要件は新築住宅・既存住宅ともに40㎡以上へ緩和されますが、合計所得金額1,000万円超の方や、子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方は50㎡以上が条件です(国土交通省「住宅:住宅ローン減税」)。

なお、よく目にする「最大控除額」は、借入限度額×控除率0.7%×控除期間で計算した理論上の上限額です。実際の控除額は毎年の年末ローン残高が減っていくことに加え、その年の所得税額と住民税からの控除上限に制約されるため、上限まで使い切れない場合があります。金額は入居年・住宅区分(新築/買取再販/既存/リフォーム)・性能区分・世帯属性の組み合わせで異なるので、自分が当てはまる区分の数値を一次資料で確認してください。

また、ここに挙げたのは主な改正点であり、既存住宅で控除を受けるには他の基本要件も満たす必要があります。国土交通省は、引き渡しまたは工事完了から6か月以内の入居、借入金の償還期間が10年以上であることなどを要件として示し、住宅区分ごとの「適用要件確認チャート」を掲載しています。耐震性については、同省のQ&Aが昭和57年1月1日以降に建築された家屋については耐震基準適合証明書等は不要としています。所得要件や借入金の要件(親族等からの借入金は対象外)を含め、詳細は国税庁「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」で確認するのが確実です。

新築住宅の優遇が性能と立地で絞り込まれる

一方で、新築住宅の優遇は住宅性能で細分化されています。借入限度額は長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅といった性能区分と、入居年、世帯属性によって異なるため、金額は入居予定年の一次資料の表で確認してください。加えて、令和10年以降に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅は適用対象外(登記簿上の建築日付が令和10年6月30日までのものは適用対象)とされました。

さらに、入居日が令和10年以降の場合、土砂災害等の災害レッドゾーンの新築住宅は適用対象外となります(建替え・既存住宅・リフォームは適用対象)。ここでいう災害レッドゾーンは、同省の説明では災害危険区域(都市再生特別措置法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった場合に限る)、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域を指します。ハザードマップ上の危険表示とは範囲が異なるため、自治体の区域指定や都市計画情報で確認する必要があります。

国土交通省はこれらの措置の背景を「2050年カーボンニュートラルの実現に貢献する」ためなどと説明しています。新築を選ぶなら、性能区分と敷地の区域指定が、これまで以上に控除の前提条件になるということです。

新築か中古か、意思決定の判断軸5つ

制度差が縮まった今、判断は「控除額の大小」だけでは決められません。設計の現場でご相談を受けるとき、私たちが施主と一緒に整理するのは次の5つの軸です。

  1. 控除の実額:借入額・年末残高・所得税額・世帯属性で変わります。理論上の上限額ではなく、自分の条件での概算で比べます。
  2. 住宅性能:新築は性能区分を選べますが、中古は既存性能に依存します。省エネ基準適合かどうかで控除期間が10年と13年に分かれます。
  3. 立地とリスク:令和10年(2028年)以降の入居では、災害レッドゾーンの新築は控除対象外。敷地選びの重みが増します。
  4. 築年数と改修コスト:中古戸建の平均築後年数は2024年度時点で23.3年、中古マンションは30.3年(住宅金融支援機構)。改修費まで含めた総額で比べる必要があります。
  5. 間取りの自由度:注文住宅は敷地条件や家族の暮らしに合わせて設計できます。既存の枠に暮らしを合わせるか、暮らしに合わせて枠をつくるか、という選択です。

フラット35利用者調査では、注文住宅(土地付含む)の利用割合が2024年度に前年度の44.2%から34.9%へ縮小し、中古住宅の割合は34.8%となりました(住宅金融支援機構)。ただしこれはフラット35の利用者に限った傾向で、金利環境や商品特性、利用者層の変化にも左右されます。住宅市場全体の選好変化や税制改正の影響を示すものではない点に注意が必要です。

フラット35利用における注文住宅と中古住宅の利用割合の前年度比較
利用割合 前年度比較(出典: 住宅金融支援機構 2024年度フラット35利用者調査)

注文住宅を「今」選ぶなら押さえるべき3つのポイント

制度上、中古との差は縮まりました。それでもあえて注文住宅を選ぶなら、意味のある選択にするために3点を押さえたいところです。

1. 借入限度額が大きい性能区分を狙う

2026年以降も、新築の優遇は長期優良住宅・低炭素住宅やZEH水準といった高い性能区分に厚く残ります。設計段階で目指す区分を早めに決めれば、借入限度額の上限を高められる可能性があります。ただし性能認定の取得、入居時期、借入残高、納税額といった条件がそろって初めて上限に近づく点は前提です。

2. 敷地の災害リスクを先に確認する

令和10年(2028年)以降の入居では、災害レッドゾーンの新築が控除対象外になります。土地探しの初期段階で、ハザードマップに加えて自治体の区域指定・都市計画情報を確認しておくことが、資金計画の前提になります。

3. 入居時期から逆算する

控除は入居年で条件が変わります。設計事務所と建てる注文住宅は、規格住宅より工程が長くなりがちです。「いつ入居したいか」から着工・設計・土地契約を逆算する視点が欠かせません。土地選びの考え方は間口の狭い敷地で光を設計する記事も参考になります。

税制改正を踏まえた資金計画の立て方

資金計画は「借りられる額」ではなく「控除も織り込んだ総額」で組むのが基本です。フラット35利用者の平均年齢は2024年度で44.5歳(住宅金融支援機構)。返済期間と定年、教育費の重なり方を見ながら、無理のない借入額を先に決めます。

そのうえで、目指す住宅性能に応じた借入限度額と控除期間を当てはめ、13年分または10年分の控除見込みを差し引いた「実質負担」で比較します。控除見込みは理論上限ではなく、年末残高の逓減と納税額を踏まえた概算で見るのが安全です。中古を選ぶ場合は、改修費と将来の維持費まで含めて総額を見ることが大切です。素材選びと維持の考え方は経年変化を楽しむ素材の記事が手がかりになります。なお、当社の無料相談は家づくりと資金計画の一般的な整理を行うもので、税務判断は行いません。制度の適用可否や控除額の具体は税理士等の専門家にご確認ください。

施主が2026年度制度の変化で見直すべきタイムライン

最後に、入居時期から逆算する家づくりの流れを整理します。設計事務所と建てる注文住宅は、相談から引渡まで各段階で意思決定が連続します。

入居時期から逆算する注文住宅の家づくりフロー:相談から土地・設計・施工・引渡までの段階
入居逆算の家づくり(出典: S/CAPE編集部)
  • 相談・資金計画:目標入居時期と、目指す性能区分・借入額の目安を確定します。
  • 土地探し:災害レッドゾーンなど立地の区域指定を早期に確認。令和10年以降の入居なら特に重要です。
  • 設計監理:性能区分を左右する設計判断を固め、想定した借入限度額の区分に届くよう調整します。
  • 施工・引渡:入居年で控除条件が変わるため、工程の遅れが控除に影響しないよう管理します。

S/CAPEでは、土地探し・資金計画・設計監理・施工・家具までを一気通貫で担い、税制の変化を織り込みながら意思決定を伴走します。制度が動く今こそ、逆算のタイムラインを描くことが、後悔の少ない家づくりにつながります。

よくある質問

省エネ基準に適合する中古住宅は控除期間が10年から新築と同じ13年に拡充され、床面積要件も40㎡以上に緩和されました。子育て世帯等には上乗せ措置が新設され、最大控除額は210万円から273万円に増えます(国土交通省・SUUMO)。省エネ基準に適合しない住宅は10年間のままです。
住宅性能で細分化され、省エネ基準適合住宅の借入限度額は2,000万円に下がり2028年入居以降は対象外となります。一方、長期優良・低炭素住宅は4,500万円、ZEH水準は3,500万円が残ります。また2028年以降は災害レッドゾーンの新築が控除対象外となります(国土交通省・SUUMO)。
控除は入居年で条件が変わり、設計事務所と建てる注文住宅は工程が長くなりがちです。目標入居時期から着工・設計・土地契約を逆算し、目指す性能等級と借入限度額を早めに固めることが大切です。制度の具体的な適用は税理士等への確認をおすすめします。

参考資料

  1. 令和8年度税制改正概要 令和7年12月 国土交通省
  2. 住宅:住宅ローン減税 - 国土交通省
  3. 2024年度 フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)
  4. 2024年度【フラット35】利用者調査結果(住宅金融支援機構)
  5. 中古住宅(既存住宅)向け住宅ローン控除の拡充など、2026年度税制改正大綱を解説(SUUMO)
  6. 2026年度_住宅ローン控除や贈与税、税制改正でなにがどう変わる?(SUUMO)
  7. 住宅ローン減税は拡充…2026年度「税制改正大綱」で変わる不動産購入の戦略(東洋経済オンライン)
  8. 「うなぎの寝床」の土地を読む——世田谷、間口の狭い敷地で光を設計するということ
  9. 経年変化を楽しむ素材選び——無垢の床が育てる、住まいの時間
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