
登記簿は誰のものか——2026年、住所変更登記義務化と所有不動産記録証明制度が土地探しを変える
2026年、不動産の登記制度が二つの節目を迎えます。2月に所有不動産記録証明制度が始まり、4月には住所等変更登記が義務化されます。土地から家を建てる人にとって、これは「登記簿をどう読むか」を問い直す機会です。土地契約前に確認すべき権利リスクと、設計者・司法書士との関わり方を、一次情報をもとに整理します。
- ◆2026年4月1日から住所等変更登記が義務化。変更日から2年以内の申請義務、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の可能性がある(法務省)
- ◆施行前にすでに住所を変更していて未登記の場合も対象で、令和10年(2028年)3月31日までに登記が必要
- ◆2026年2月2日施行の所有不動産記録証明制度で、自分や被相続人名義の不動産を全国一括でリスト化できる。ただし登記簿上の氏名・住所と一致しないものは抽出されない
- ◆所有者不明土地は全国の土地の23%、発生原因は相続の名義変更未了63%・住所変更登記未了29%(令和6年 国交省調査/政府広報オンライン)
- ◆土地契約前は、登記名義人の住所、相続登記の完了、共有者の人数、境界確定の有無を確認する。権利の整理は司法書士、建てられる建物の可能性は設計者と並行して進める
2026年、不動産登記の制度は二つの節目を迎えます。要点は次のとおりです。
2026年2月2日——所有不動産記録証明制度が施行。
2026年4月1日——住所等変更登記が義務化。対象は不動産の所有権の登記名義人で、住所等の変更日から2年以内に申請(不動産登記法第76条の5)。
経過措置——施行日より前に変更済みで未登記の場合は、令和10年(2028年)3月31日までに登記。
罰則——正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の可能性。
この記事では、この二つの改正が土地探しにどう関わるのか、契約前に登記簿から何を読み取るべきか、そして誰に相談すればよいのかを、法務省の資料を中心に、政府広報などの公的解説も参照しながら整理します。
2026年4月から何が変わる——住所変更登記義務化の背景と内容
2026年4月1日、不動産登記法の改正により、住所等変更登記が義務化されます。対象は一部の人ではありません。不動産の所有権の登記名義人が対象で、氏名・名称または住所を変更した日から2年以内に変更登記を申請する義務を負います(不動産登記法第76条の5)。法人の名称・本店の変更も含まれます。根拠は法務省「住所等変更登記の義務化について」に示されています。
正当な理由なく申請を怠った場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。また、施行日より前にすでに住所を変えていて未登記のままという方も義務化の対象となり、令和10年(2028年)3月31日までに変更登記を済ませる必要があります。制度の細部は法務省のQ&Aで確認できます。
なぜ「引っ越したら登記」なのか
背景にあるのは所有者不明土地の問題です。法務省の資料には、令和6年の国土交通省調査として、所有者不明土地の割合が23%と示されています(法務省資料)。ただし、この種の数値は調査の母集団や算出方法によって幅が出るため、目安として読むのが安全です。「面積は九州を上回る」という表現も、政府広報オンラインが「いわれています」と伝聞の形で紹介しているもので、民間の推計に由来します。発生原因の内訳についても、政府広報オンラインは相続時の名義変更未了が63%、住所変更登記の未了が29%と解説しており(政府広報オンライン)、おおむね6割強が相続登記の未了、3割前後が住所変更登記の未了、と押さえておけば十分です。

法務省も、所有者不明土地問題の発生原因の約3分の1が住所変更登記の未了によるものであると説明しています。転勤や住み替えのたびに登記まで手が回らなかった——その積み重ねが、次の世代が土地を動かせない状態をつくってきた、ということです。
負担を軽くする「スマート変更登記」
義務だけが増えるわけではありません。所有者の負担軽減のため、登記官の職権による変更登記(スマート変更登記)が新設されました。国内に住所のある個人の場合、あらかじめ「検索用情報の申出」をしておくと、法務局が少なくとも2年に1回住基ネットに照会して住所等の変更の有無を確認し、変更があった方には変更登記をしてよいかを確認する連絡をしたうえで、回答があった方について順次登記が行われます(法務省「スマート変更登記のご利用方法」)。無条件・自動で登記されるわけではなく、本人の了解が前提です。法人の場合や海外に居住する方の場合は仕組みが異なるため、利用可否は法務局または司法書士へ確認するのが確実です。
所有不動産記録証明制度で何ができるようになったか
もう一つの変化が、2026年2月2日に施行された所有不動産記録証明制度です。これは、本人または被相続人が登記名義人として記録されている不動産を、全国一括でリスト化した証明書を法務局で取得できる制度です(法務省「所有不動産記録証明制度について」)。
これまで、亡くなった親がどこにどれだけ不動産を持っていたかを調べるには、市区町村ごとの名寄帳や権利証を手がかりに、地道に探すほかありませんでした。2024年4月からの相続登記義務化に伴い、相続人が被相続人名義の不動産を把握しやすくし、手続的負担の軽減と登記漏れの防止を図る——それがこの制度の目的です。
一つ、大きな注意点があります
この証明書は万能ではありません。旭川地方法務局の案内(地方法務局による手続案内)によれば、請求書に記載した検索条件の氏名・住所と、不動産登記簿上の氏名・住所が一致していない不動産は抽出されません。つまり、住所変更登記が未了のままだと、本来所有しているはずの不動産が証明書に載らない可能性があるのです。
住所変更登記の義務化と、所有不動産記録証明制度。この二つは別々の改正ではなく、「登記簿を現実に合わせておくこと」で初めて機能する、一組の仕組みとして理解しておきたいところです。
土地購入前に確認すべき3つの権利リスク
ここからは、土地を探す側の視点に移ります。設計の現場で、契約直前に「あと少し時間がかかります」となる土地には、いくつか共通する事情があります。
1. 相続登記が済んでいない土地
登記名義人がすでに亡くなっていて、相続人全員の合意が整っていないケースです。相続登記は2024年4月1日からすでに義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が求められています(政府広報オンライン)。とはいえ、相続人が多い、遠方にいる、連絡が取れないといった事情で登記が進んでいない土地は現実に存在します。売買契約のスケジュールは、この解決に要する期間に左右されます。
2. 名義人の住所が古いままの土地
登記簿上の住所が20年前のもの、というのは珍しくありません。売主本人であることの確認や、必要書類の準備に時間がかかります。2026年4月の義務化以降は解消が進むと見込まれますが、経過措置の期限が令和10年3月末である以上、当面は「古い住所のまま」の登記簿に出会う可能性があります。
3. 記載されていない権利や境界の未確定
抵当権や地役権といった登記された権利の有無は、登記簿で確認できます。一方、未登記の利用権や通行の取り決め、越境の有無、隣地との境界の合意状況は、登記簿・公図・地積測量図だけでは分かりません。境界の確認には、現地の境界標、隣地所有者との境界確認書、確定測量図などが必要で、土地家屋調査士に相談する領域です。道路との関係については、2項道路とセットバックの条件を読む視点もあわせて確認しておくと、敷地に建てられる建物の輪郭が具体的になります。

登記簿から何が読み取れるか——実務的なチェックリスト
登記事項証明書は、法務局で誰でも取得できます。土地の資料をもらった段階で目を通しておくと、判断の質が変わります。
表題部——所在・地番・地目・地積。地目が「田」「畑」であれば農地法上の農地に当たり、宅地として使うには農地転用の手続が関わる可能性があります(農林水産省「農地転用許可制度について」)。「山林」の場合は農地転用ではなく、開発許可や森林法上の手続、造成の規制などが関わることがあるため、自治体の担当窓口で確認します。
権利部(甲区)——所有権の履歴。「相続」「遺贈」の記載や、共有名義になっていないか。共有者が多いほど、意思決定に時間がかかります。
権利部(乙区)——抵当権・根抵当権・地役権など、登記された権利の有無。抹消の見通しが立っているかを確認します。
名義人の住所——現住所と一致しているか。古いままなら、決済までに変更登記が必要になる場合があります。
公図・地積測量図——登記簿とセットで。形状、接道の位置、隣地との関係の手がかりになります。ただし境界が確定しているかどうかは、これらだけでは判断できません。
ここで重要なのは、登記簿はあくまで「権利の記録」であり、建てられる建物を保証するものではないという点です。用途地域、建ぺい率・容積率、高さ制限や斜線制限、そして実際の接道状況——これらは登記簿の外にあります。だからこそ、権利のチェックと設計上の可能性の検討は、並行して進める必要があります。
また、宅地建物取引業者が関わる売買では、買主は契約が成立するまでに宅地建物取引士から重要事項説明を受ける立場です。登記された権利の種類・内容や登記名義人、都市計画法・建築基準法などの法令に基づく制限の概要は、宅地建物取引業法第35条に基づく説明事項に含まれます(国土交通省「宅地建物取引業法第35条」関係資料、国土交通省「重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧」)。自分で読むだけでなく、重要事項説明書、登記事項証明書、公図、地積測量図、境界の確認資料の提示を業者に求めておくと、確認の抜けが減ります。
契約前に自分の所有不動産を把握する手順
買う側の権利関係も、実は無関係ではありません。相続で取得した実家や、共有持分のまま気づいていない土地がある場合、それは資金計画にも売却判断にも関わってきます。所有不動産記録証明制度は、その棚卸しに使えます。
自分名義・被相続人名義の不動産を洗い出す——法務局で所有不動産記録証明書を請求します(法務省)。
登記簿上の住所・氏名を確認する——検索条件と登記簿の記載が一致しないと抽出されないため、心当たりのある不動産が載っていない場合は、旧住所での再請求や個別の調査を検討します(旭川地方法務局)。
未了の登記を整理する——必要な登記の種類と順序は事案によって異なります(たとえば相続登記の前提として住所変更登記が必要かどうかも、ケースにより変わります)。着手前に司法書士へ確認してください。関係法令・通達は法務省が公表しています。
資金計画に反映する——保有不動産の売却や活用を前提にするなら、権利の整理は前提条件です。相続した実家をどう扱うかについては、空き家3,000万円控除と期限の読み方も判断材料になります。
なお、具体的な税務・法務の判断は個別事情によって結論が変わります。ここでの整理は一般的な情報として捉え、実際の手続きは司法書士・税理士へご相談ください。
不動産業者・司法書士との相談で押さえるべきポイント
土地を探すとき、多くの方は不動産会社と向き合います。そこで交わされる会話に、次の三つを加えてみてください。
「登記名義人の住所は現住所と一致していますか」——決済までのスケジュールに直結します。
「相続登記は完了していますか。共有者は何名ですか」——交渉相手が一人とは限りません。
「境界は確定していますか。確定測量の予定は」——設計と施工の前提条件になります。
権利の整理は司法書士の領域ですが、その土地に「何が建てられるか」を読むのは設計者の領域です。設計の現場では、登記簿と公図を見た時点で、旗竿地の竿部分の幅、変形地の残余空間、方位と隣家の高さから、平面計画のおおよその輪郭が浮かびます。条件が不利に見える土地でも設計の工夫で成立する場合はありますが、それは権利・境界・接道といった法的・技術的な確認が済んでいることが前提です。
土地の権利を確かめる作業と、土地の可能性を読む作業。この二つを同じ時間軸で進めることが、後戻りの少ない家づくりにつながります。あわせて、2026年の税制改正と住宅ローン控除(新築・中古)の読み方もご覧ください。判断に迷う段階であれば、無料相談で図面と登記簿を持ち込んでいただくこともできます。
まとめ——登記簿を、現実に合わせておくこと
2026年の二つの改正が示しているのは、シンプルなことです。住所や氏名が変わったら2年以内に登記する。施行前の変更分は令和10年3月末まで。相続で取得した不動産は所有不動産記録証明制度で洗い出す。登記簿を現実に合わせておくことは、義務であると同時に、次に土地を動かす人への引き継ぎでもあります。
よくある質問
- Q. 2026年4月より前に引っ越して住所変更登記をしていない場合、どうなりますか。
- 施行日より前に住所等を変更していて未登記の場合も義務化の対象となります。法務省の案内によれば、令和10年(2028年)3月31日までに変更登記を申請する必要があります。期限や個別の取扱いについては、法務局または司法書士へご確認ください。
- Q. 所有不動産記録証明書を取れば、相続した不動産をすべて把握できますか。
- 必ずしもすべてが把握できるとは限りません。請求書に記載した検索条件の氏名・住所と、不動産登記簿上の記載が一致していない不動産は抽出されないためです(旭川地方法務局の案内)。住所変更登記が未了の不動産は載らない可能性があるため、旧住所での再請求や個別調査も併せて検討するのが安全です。
- Q. 土地の契約前に、登記簿のどこを見ればよいですか。
- 表題部の地目・地積、甲区の所有権の履歴と共有者の有無、乙区の抵当権など他の権利の有無、そして登記名義人の住所が現住所と一致しているかが基本です。あわせて公図・地積測量図で形状と接道を確認します。ただし登記簿は権利の記録であり、建てられる建物を保証するものではないため、用途地域や斜線制限などの検討は設計者と並行して進めてください。
参考資料
- 法務省:住所等変更登記の義務化について
- 法務省:住所等変更登記の義務化に関するQ&A
- 法務省:住所等変更登記の義務化
- 法務省:所有不動産記録証明制度について
- 旭川地方法務局:所有不動産記録証明制度が令和8年2月2日から運用開始
- 政府広報オンライン:所有者不明土地 相続や住所等の変更の未登記により全国で発生
- 法務省:住所等変更登記の義務化の関係法令等
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