白い天井と広いコンクリート床の大型撮影スタジオ内に、白いクラシックカーが展示されている様子

撮影スタジオを、物件探しからつくる。

That’s color VASE|不動産・ブランディング・設計・開業まで 撮影スタジオをつくる。 そう聞くと、まず空間のデザインを考える仕事のように思えます。 しかし、That’s color VASEのプロジェクトは、設計から始まったわけではありません。 誰に使ってもらうのか。どのような撮影需要に応えるのか。どこに出店するのか。どのくらいの規模が必要なのか。そして、一店舗で終わらず、その先にどのような展開を描くのか。 最初にあったのは、「撮影スタジオという事業をつくる」という構想でした。 そこから物件を探し、事業計画を立て、ブランドを考え、その事業に必要な空間を設計する。 That’s color VASEは、現在のS・CAPE CONSULTINGにもつながる、不動産・事業・ブランディング・建築を横断したプロジェクトです。 ⸻

That’s color Vase|不動産・ブランディング・設計・開業まで

撮影スタジオをつくる。

そう聞くと、まず空間のデザインを考える仕事のように思えます。

しかし、That’s color Vaseのプロジェクトは、設計から始まったわけではありません。

誰に使ってもらうのか。どのような撮影需要に応えるのか。どこに出店するのか。どのくらいの規模が必要なのか。そして、一店舗で終わらず、その先にどのような展開を描くのか。

最初にあったのは、「撮影スタジオという事業をつくる」という構想でした。

そこから物件を探し、事業計画を立て、ブランドを考え、その事業に必要な空間を設計する。

That’s color Vaseは、現在のS・CAPE CONSULTINGにもつながる、不動産・事業・ブランディング・建築を横断したプロジェクトです。

01|始まりは、異なる専門性を持つ3人の構想

プロジェクトの発端となったのは、プロカメラマン、投資家、広告会社勤務という、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ3人の経営メンバーによる事業構想でした。

撮影現場を知る人。
事業や投資を考える人。
広告やマーケットを知る人。

私はそこに、物件探し・賃貸仲介、建築・インテリア設計、そして開業後の運営フォローを担う立場として参画しました。

最初から建築ありきではありません。

撮影する側、事業を成立させる側、マーケットを見る側、不動産と空間をつくる側。

異なる専門領域を持つメンバーが集まり、一つの事業を組み立てるところからスタートしました。

02|撮影スタジオという視点で、不動産を探す

物件探しでは、一般的な店舗やオフィスとは異なる条件を重視しました。

特に重要だったのが、天井高さ、広さ、近隣からのアクセス、そして大田区というエリアです。

撮影スタジオでは、駅からの距離や建物の新しさだけでは物件価値を判断できません。

カメラを十分に引ける距離があるか。
照明やセットを組める天井高さがあるか。
機材を持ったスタッフがアクセスしやすいか。
既存設備を撮影用途へ転用できるか。

そして、その条件を満たしながら事業として成立させられるか。

最終的に選定したのが、東京都大田区仲六郷、雑色にある既存ビルでした。

1986年竣工の鉄骨鉄筋コンクリート造。賃貸借対象面積は約722㎡(約218坪)で、もともとは店舗・事務所として使用されていた建物です。

既存建物の電気・動力設備なども確認しながら、撮影スタジオへの転換可能性を検討しました。

物件を見つけてから、何をつくるかを考えたのではない。

事業構想があり、それを実現できる不動産を探す。

この順序が、That’s color Vaseでは重要でした。

03|「雑色」から生まれた、That’s color

そして、この場所との出会いはブランドにもつながりました。

撮影スタジオブランドの名称である「That’s color」。

その名前の由来は、1号店を構えた「雑色(ぞうしき)」という地名です。

雑色という場所から始まること。

そして撮影スタジオが、写真や映像、ファッション、商品、人物など、さまざまな「色」や表現を生み出す場所であること。

土地の名前をきっかけとして、That’s colorというブランドへ展開しました。

これは、このプロジェクトを象徴する出来事でもあります。

不動産は単なる「箱」ではありません。

その土地の名前や環境、建物の特徴も、事業やブランドをつくる材料になる。

物件を選ぶことと、ブランドをつくることは、必ずしも別々の仕事ではない。

That’s colorでは、不動産そのものがブランドの起点になりました。

04|Vase ― 表現を支える「花瓶」

1号店につけた名前が、Vaseです。

VASEとは「花瓶」。

花瓶は、それ自体が主役になるためだけのものではありません。

そこに生けられる花を受け止め、支え、その魅力を引き出すための「器」でもあります。

撮影スタジオも同じように考えました。

カメラマン、モデル、商品、ブランド、広告、映像、クリエイター。

スタジオには、毎回違う人やモノが入り、そこから違う表現が生まれます。

空間自体が強く主張しすぎるのではなく、そこで生まれる表現を受け止める場所でありたい。

表現という「花」を支える、「花瓶」のような場所。

それがVaseという名前に込めた考え方です。

05|一つのVaseから、さまざまな花へ

このネーミングは、1店舗目だけを考えて決めたものではありません。

当初から、That’s color Vaseを起点として近隣に複数の撮影スタジオを展開する構想を持っていました。

Vaseをブランドの軸となる「花瓶」と捉え、その後に展開するスタジオには、それぞれ異なる花の名前を与えていく。

例えば、

That’s color ROSE

のように。

さらに、各店舗のインテリアデザインも同じものを複製するのではなく、すべて異なるタイプにすることを考えていました。

同じブランドでありながら、店舗を変えれば違う撮影ができる。

同じ空間を反復する一般的なチェーン展開ではなく、ブランドとしての思想を共有しながら、それぞれ異なる個性を持ったスタジオをつくる。

一つのVASEから、さまざまな花が広がっていく。

ブランドの考え方と多店舗展開の事業構想は、最初からつながっていました。

06|1店舗ではなく、その先を設計する

当初描いていた事業構想は、大きなものでした。

1店舗目を1,000㎡を超える大型撮影施設として構想し、3つの異なるスタジオとRooftopを設ける。

そして、この1店舗だけで完結させるのではなく、近隣にさらに4店舗を展開する計画でした。

そのすべてに異なるインテリアデザインを与え、エリア全体で多様な撮影需要に対応する。

つまり、設計していたのは一つの撮影スタジオだけではありません。

その先に続く事業の基点として、1店舗目をどうつくるか。

この視点が必要でした。

07|デザインだけではない。時間とコストも設計する

このプロジェクトで、特に難しかったのがコスト管理と工程管理でした。

撮影スタジオは、完成するだけでは売上を生みません。

工事期間が長くなれば、それだけOPENが遅くなる。

しかし、OPENを急ぐために工事費を無制限に増やすこともできません。

さらに、その先には複数店舗への展開構想がありました。

だからこそ、

何をつくるか。
何をつくらないか。
どこにコストをかけるか。
既存の何を利用するか。
どうすればOPENまでの期間を短縮できるか。

これらを設計と同時に考える必要がありました。

既存建物を活かせるところは活かし、撮影スタジオとして必要な部分には投資する。

デザインだけを最適化するのではなく、時間とコストを含めてプロジェクト全体を最適化する。

振り返れば、この時点ですでに、空間だけではなく事業の一部を設計していたのだと思います。

08|約1000㎡を、一つのスタジオにしない

大きな床面積を一つの撮影空間として使うのではなく、建物の特徴を読みながら複数の撮影シーンをつくりました。

撮影スペースだけではありません。

メイクルーム、スタッフ関連諸室、水回りなど、撮影を支えるバックヤード機能も配置。屋上についても撮影利用を前提に計画しています。

撮影施設を設計するとき、重要なのは「写真に写る場所」だけではありません。

出演者が準備する。
スタッフが動く。
機材を搬入する。
撮影する。
そして、次のシーンへ移動する。

こうした撮影現場全体の動きを、一つの建物の中で成立させる必要があります。

設計図にも、撮影空間だけでなく、こうした運営を支える機能が組み込まれています。

白とブルーの壁で仕切られたメイクルーム、鏡台と椅子、カーテンで仕切られた着替えスペース

09|「写真になったとき」を設計する

撮影スタジオには、通常の建築とは少し違う視点があります。

カメラから、どう見えるか。

どこから撮るのか。
どこまでカメラを引けるのか。
背景に何が入るのか。
自然光がどこから入るのか。
時間によって光がどう変わるのか。

建築として美しいことと、撮影したときに魅力的な背景になることは、必ずしも同じではありません。

だからこそ、スタジオとして区切られた場所だけではなく、階段、廊下、開口部、屋上なども含めて、建物そのものを「撮影資源」として考える。

同じ床面積でも、撮影できるシーンを増やせれば、利用者に提供できる価値は変わります。

これは空間設計であると同時に、事業性を高めるための設計でもありました。

大理石調のタイル壁とブルーのソファ、トルソーやポスターが配置された撮影セット

10|見えない部分にも、撮影スタジオをつくる

撮影スタジオには、一般的な店舗やオフィスとは異なるインフラが必要です。

既存設備を確認したうえで、壁付け・天井コンセント、撮影用電源、200V電源、LAN、アクセスポイント、天吊設備などを計画しました。

当時の設計資料には、照明だけでなく、撮影用途を想定した電源・通信設備まで詳細に検討した過程が残っています。

写真に写るインテリアだけが、撮影スタジオではありません。

利用者にはほとんど意識されない電源、通信、搬入、バックヤードといった部分が機能して初めて、撮影施設として成立します。

見えるデザインと、見えないインフラ。

その両方を設計する必要がありました。

コンクリート打ちっぱなしの壁と、大理石調タイルの床が敷かれた撮影スペース、奥にトルソーが立つ

設計図の向こう側に、経営がある。

振り返ると、That’s color Vaseで行っていたことは、既存ビルを撮影スタジオへ改修することだけではありませんでした。

事業を構想する。

その事業に適した物件を探す。

土地の名前からブランドが生まれる。

ブランドの思想を空間へ落とし込む。

コストと工程を調整しながら設計し、OPENまで持っていく。

そして、その先の店舗展開まで考える。

建築設計だけを切り取れば、既存建物を撮影スタジオへ転換するコンバージョンプロジェクトです。

しかし、その設計図の向こう側には、最初から「経営」がありました。

どんな空間をつくるのかではなく、
この場所で、どんな事業を成立させるのか。

その答えの一つとして、建築がある。

That’s color Vaseは、S・CAPE CONSULTINGが考える「不動産から事業と空間をつくる」という仕事につながる、大きな経験となりました。

そして、OPENしてからが本番だった。

建築には、竣工があります。

物件を探し、設計し、工事を行い、完成する。

一つの明確なゴールがあります。

しかし、事業には竣工がありません。

That’s color VaseをOPENした後、私の役割も変化していきました。

必要になったのは、集客のフォロー。

さらに、実際の利用状況を見ながら、当初描いていた事業を組み立て直すこと。

そして、撮影スタジオという用途だけにとらわれず、

「この空間には、ほかにどんな使い方があるのか」

を考えることでした。

物件を探し、設計するという当初の役割から、集客を考え、運営を支え、事業を組み直し、空間の新しい活用方法を考えるところまで。

いつの間にか、仕事の領域は建築の外へ広がっていました。

ここから、次のテーマが始まります。

「事業を設計する」とは、どういうことなのか。

木製フローリングの広いスタジオ空間、奥に窓と階段の手すりが見える

PROJECT DATA

Project
That’s color Vase

Brand
That’s color

Location
東京都大田区雑色

Existing Building
1986年竣工

Structure
鉄骨鉄筋コンクリート造

Lease Area
約722㎡(約218坪)+Rooftop約360㎡(約109坪)

Use
撮影スタジオ

Facility
3 Studios / Rooftop / Makeup & Staff Space etc.

Scope
物件選定・賃貸仲介 / 事業企画 / ブランディング / 建築・インテリア設計 / 開業支援 / 運営フォロー

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