白いヴィンテージオープンカーが置かれた、コンクリート打ちっぱなしの広い撮影スタジオ内観。バーカウンターや椅子も配置されている。

領域のない設計。

That’s color|直営・業務委託・提携。撮影スタジオ運営から考える「事業設計」 第1弾では、That’s color VASEが生まれるまでを書きました。 プロカメラマン、投資家、広告会社勤務という異なる専門性を持つメンバーによる事業構想から始まり、私は物件探し・賃貸仲介、建築・インテリア設計、そして運営フォローという立場でプロジェクトに参画しました。 雑色という場所から「That’s color」というブランドが生まれ、「表現を支える器」という意味を込めて、1号店をVASEと名付けました。 当初描いていたのは、VASEを起点として近隣に複数の店舗を展開する構想です。 1店舗目を大型の撮影施設としてつくり、3つの異なるスタジオとRooftopを設け、その周辺にも異なるデザインを持った店舗を展開していく。 設計し、工事を終え、OPENする。 建築として考えれば、ここで一つのプロジェクトは完成します。 しかし、事業としては違いました。 OPENしてからが、本当のスタートでした。 ⸻

That’s color|直営・業務委託・提携。撮影スタジオ運営から考える「事業設計」

第1弾では、That’s color Vaseが生まれるまでを書きました。

プロカメラマン、投資家、広告会社勤務という異なる専門性を持つメンバーによる事業構想から始まり、私は物件探し・賃貸仲介、建築・インテリア設計、そして運営フォローという立場でプロジェクトに参画しました。

雑色という場所から「That’s color」というブランドが生まれ、「表現を支える器」という意味を込めて、1号店をVASEと名付けました。

当初描いていたのは、Vaseを起点として近隣に複数の店舗を展開する構想です。

1店舗目を大型の撮影施設としてつくり、3つの異なるスタジオとRooftopを設け、その周辺にも異なるデザインを持った店舗を展開していく。

設計し、工事を終え、OPENする。

建築として考えれば、ここで一つのプロジェクトは完成します。

しかし、事業としては違いました。

OPENしてからが、本当のスタートでした。

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01|計画通りにはいかない。それが事業だった。

事業計画をつくり、必要な空間を設計し、撮影スタジオをOPENする。

そこまでは、ある程度計画することができます。

しかし、実際に運営を始めると、設計図にも事業計画にも書かれていなかった課題が次々と出てきました。

集客、予約、稼働率、価格設定、顧客対応、清掃、設備管理。

そして、

「どのスタジオが、どのような目的で選ばれているのか」

という、実際に運営しなければ分からない利用者側の評価です。

設計段階では、空間をつくる側から「こう使われるだろう」と予測します。

しかし、実際の使われ方が、その予測通りになるとは限りません。

利用者は、設計者が想定していなかった場所を背景に使うこともあれば、こちらが特徴だと思っていた場所がそれほど使われないこともある。

設計者が考える価値と、利用者が感じる価値は必ずしも同じではない。

運営に関わったことで、そのことを実感するようになりました。

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02|設計者から、運営側へ

私自身の役割も、OPENを境に変化していきました。

当初は、物件を探し、賃貸仲介を行い、建築・インテリアを設計することが主な役割でした。

しかし、OPENすれば設計者としての仕事が終わるわけではありませんでした。

必要になったのは、集客のフォローです。

どうすればスタジオを知ってもらえるのか。

どんな利用者に来てもらいたいのか。

空いている時間や空間を、ほかの方法で活用できないか。

そして、当初の事業計画と実際の運営にズレがあれば、どのように組み立て直すのか。

いつの間にか考えていたのは、建築のことだけではなくなっていました。

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03|「店舗を増やす」から「仕組みを増やす」へ

当初は、That’s color Vaseを1号店として、近隣に複数の店舗を展開する計画を描いていました。

すべて異なるインテリアを持つ撮影スタジオをつくり、利用者が撮影内容に合わせて選択できるようにする。

ブランドとしても、VASE=花瓶を起点として、その後の店舗にはROSEなど、それぞれ異なる花の名前を与えていく構想です。

考え方そのものは、現在にもつながっています。

しかし、実際に運営してみると、一つの疑問が生まれました。

店舗を増やすためには、本当にすべての物件を自分たちで借り、自分たちでつくり、自分たちで運営する必要があるのか。

直営店を一つ増やすたびに、不動産を確保し、投資を行い、設計・施工し、スタッフを確保し、運営体制を整える必要があります。

売上だけではなく、固定費も管理業務も増えていく。

そこで、店舗数を増やすことだけではなく、事業の仕組みそのものを増やすことを考えるようになりました。

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04|直営店というモデル

直営には、大きなメリットがあります。

自分たちで物件を選び、自分たちで空間をつくり、自分たちで運営する。

ブランドの考え方を空間やサービスへ直接反映でき、利用者の声も直接聞くことができます。

何が予約につながったのか。

どんな撮影で使われているのか。

どの空間が評価されているのか。

現場から得られる情報量は非常に大きい。

設計者としても、自分が設計した空間の「その後」を知ることができるという貴重な経験になりました。

一方で、直営は最も経営資源を必要とする方法でもあります。

物件、工事、設備、人員、集客、維持管理。

すべてを自分たちで抱えることになります。

直営には直営の強さがある。

しかし、直営だけで事業を広げていくことが、必ずしも唯一の答えではありませんでした。

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住宅街の一角に建つ、白を基調としたモダンな3階建て建築の外観。

05|業務委託という方法

次に考えたのが、業務委託という形です。

すべてを自分たちで所有・賃借してスタジオをつくるのではなく、物件や施設を持つ別の事業者と組み、撮影スタジオとしての運営を担う。

これによって、直営とは異なる形でThat’s colorの運営ノウハウを展開できます。

一方で、難しさもあります。

物件所有者、運営者、ブランド、それぞれの考え方が完全に一致するとは限りません。

誰がどこまで責任を持つのか。

どこまでThat’s colorとして統一するのか。

設備投資を誰が行うのか。

集客、予約、現場対応、メンテナンスをどう分担するのか。

建築で言えば、詳細図を書けば解決できる問題ではありません。

人と人、会社と会社の関係そのものを設計する必要がある。

ここで、仕事の対象が明らかに「空間」から「仕組み」へ変わっていきました。

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06|さらに、提携店へ

そして、もう一つの形が提携店です。

自分たちで物件を借りるわけでもなく、必ずしも運営そのものをすべて受託するわけでもない。

すでに存在する店舗空間と連携し、それぞれが持つ強みを活かしながら、利用者へ選択肢を提供する。

ここまで来ると、当初考えていた「店舗を増やす」という発想とはかなり違います。

重要なのは、自分たちが何店舗所有しているかではない。

利用者が求める撮影環境を、どれだけ提供できるか。

そう考えれば、すべての不動産を自社で抱える必要はありません。

自分たちでつくる場所があってもいい。

運営を任される場所があってもいい。

既存のスタジオと組む場所があってもいい。

直営・業務委託・提携。

異なる仕組みを組み合わせることで、事業の広がり方そのものを変えていく。

当初の計画とは違う形ですが、これも一つの事業拡大だと考えるようになりました。

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07|「別の使い方はできないか」を考える

運営を始めてから、もう一つ大きく変わったことがあります。

それは、空間の用途を固定して考えなくなったことです。

撮影スタジオとしてつくったから、撮影にしか使えない。

そう考える必要はありません。

予約が入っていない時間に、ほかの用途で利用できないか。

撮影以外のイベントや展示、プロモーションなどに使えないか。

建物や空間が持っている価値を、別の方法で収益へ変換できないか。

「この空間は何のためにつくられたか」ではなく、
「この空間には、ほかに何ができるか」。

これは、不動産を見るときにも重要な考え方になりました。

用途を決めてから建物を見るのではなく、建物が持つ可能性から用途を考える。

設計と運営の両方に関わったことで、空間を見る視点そのものが変わっていきました。

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08|運営を経験すると、設計も変わる

建築を設計して引き渡すだけでは、その後に何が起きるのかを完全に知ることはできません。

運営に関わると、設計時には見えなかったことが見えてきます。

清掃しやすいか。

壊れたときに直しやすいか。

スタッフが運営しやすいか。

利用者に説明しやすいか。

撮影の切り替えがしやすいか。

投資した部分が、実際に利用価値につながっているか。

そして、空間が売上にどう影響しているのか。

デザインとして正しいことと、事業として正しいことが一致しない場合もあります。

だからこそ、現在では設計するときにも、

「完成したらどう見えるか」だけではなく、
「完成したあと、どう使われ、どう運営されるか」

まで考えるようになりました。

運営は、設計の答え合わせでもあります。

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09|建築には境界線がある

建築には、敷地境界線があります。

法規があり、構造があり、用途があり、予算があります。

もちろん、その条件の中で考えられる可能性は無数にあります。

しかし、設計する対象には一定の領域があります。

一方、事業には明確な境界線がありません。

集客に問題があれば、マーケティングを考える。

稼働率に問題があれば、価格や利用方法を考える。

直営での拡大が難しければ、業務委託を考える。

業務委託だけでも足りなければ、提携を考える。

撮影だけでは空間を使い切れなければ、別の用途を考える。

課題を解決しようとすると、自然と次の領域へ踏み込むことになります。

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領域が決められている設計と、領域のない事業設計。

ただ、建築設計と事業設計は、まったく別のものではないとも感じています。

建築では、敷地、法規、構造、予算、設備、動線など、さまざまな条件を整理します。

それぞれの関係性を考え、優先順位を決め、全体として成立する答えをつくっていく。

事業でも同じです。

不動産、投資、ブランド、集客、人、契約、運営、収益。

扱う対象が変わっただけで、複数の条件を整理し、関係性を組み立て、全体を成立させるという思考そのものは、建築設計とよく似ています。

壁や床、構造、設備を組み立てる代わりに、

人と不動産とブランドと収益を組み立てる。

設計する対象が、空間から仕組みへ広がった。

そう考えると、That’s colorで経験してきたことは、建築から離れたのではなく、建築で培った「設計する思考」を事業へ拡張していく過程だったのかもしれません。

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完成図のない設計

That’s color Vaseをつくったときには、図面がありました。

完成形を描き、そこへ向かって工事を進めることができました。

しかし、事業には完成図がありません。

直営店をつくり、運営する。

うまくいかなければ修正する。

業務委託という仕組みを試す。

さらに提携という方法を考える。

必要であれば、空間の使い方そのものを変える。

つくって、使って、検証して、また設計する。

その繰り返しです。

当初描いていた計画と、現在の形が違うことは、失敗とは限りません。

実際の利用者や市場に合わせて、事業そのものを設計し直していく。

むしろ、その柔軟性こそが事業には必要なのだと思います。

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可能性は、領域の外側にある。

That’s color Vaseでは、私は物件探しと建築設計からプロジェクトに入りました。

そこから集客を考え、運営をフォローし、事業を組み直し、新しい活用方法を考えるようになりました。

そして、直営だけではなく、業務委託、提携という仕組みへ。

最初からそこまでを計画していたわけではありません。

必要になったから、領域を越えていった。

建築には境界線があります。

しかし、事業には、その境界線を自分たちで決める自由があります。

領域が決められている「建築設計」と、領域のない「事業設計」。

後者は難しく、計画通りにいかないことばかりです。

だからこそ、まだ設計できるものがある。

不動産から建築へ。
建築からブランドへ。
ブランドから運営へ。
運営から新しい事業へ。

事業設計の可能性は、無限大です。

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PROJECT / BUSINESS DEVELOPMENT

Brand
That’s color

Starting Point
That’s color Vase

Business Model
直営店 / 業務委託店 / 提携店

Field
撮影スタジオ / 不動産 / 建築・インテリア / ブランディング / 集客 / 運営 / 空間活用 / 事業設計

Role
物件選定・賃貸仲介 / 建築・インテリア設計 / 運営フォロー / 事業再構築 / 新規活用検討

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